MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

DDリストってなんでこんな長いのと思ったら読む DD リストは削っていいか?

M&A

Due Diligence(DD)の際に弁護士、会計士がSellerに開示を要求するリストを作成するが、通常100項目以上に亘る。これを見たBさんは、「こんなのSellerに出したら怒ってしまうよ、大体数が多すぎるし、会計士と弁護士のリストは重複してるし、且つ、メーカーで…

商社マンは絶対この違いを理解しないといけない 事業戦略と全社戦略

実は戦略には2種類ある。みなさんご存知のポーターの基本戦略(差別化、低コスト、ニッチ)や競争優位性、3C分析等は事業戦略の範疇にあるが、実はこれとは別に全社戦略というものがある。全社戦略は、総合商社みたいな、多くの事業を傘下に持つ企業(以下…

MBAの教授が必読と言っていたマキャベリ 君主論

私のMBAのイギリス人の教授が、「君たちが将来企業のトップを目指すなら、絶対に君主論を読みなさい。僅か、数ドルのこの本は、あなたに転ばぬ先のつえをたくさん与えてくれるのだから。」と言っていた。因みに、君主論ももちろんいいが、塩野七生の「マキャ…

顧客価値の意味 商社人でも最低おさえたい

顧客に何を売っているかを問い続けるのはマーケティングの基本。スタバのThird place(自宅、職場以外のくつろげる場所)は有名だが、単純に商品・サービスを売っていると考えるのではなく、なぜ顧客が買ってくれるのか、どこに価値があるのかを考えることが…

経営戦略の目的

経営学では、維持可能な業界平均以上の利益(sustainable superior profit SSP)を上げることが経営戦略の目的と言われる。 ポイントは、経営戦略の目的はただの利益を上げることではなく、①維持可能な、②業界平均以上という2つの条件がつくこと。 式で表す…

戦略の2つの学派(ポジショニング派とケイパビリティ派)

戦略にはポジショニング派とケイパビリティ派の2つの学派があるというと難しく聞こえるが、実は非常にシンプルな話。 ポジショニング派は、ポーターのFive forces、つまり外部環境をベースに競争が少ない儲かる業界で勝負しましょう、という理論。 ケイパビ…

3C分析とSweet spot

ご存知の通り、戦略構築に当たっての基礎となるのが3Cであり、戦略は突き詰めると明確なSweet Spotを持つことである。Sweet Spotとは、顧客のニーズがあり、自社が提供できる価値であり、一方、他社が提供できない価値を言う。現実的に自社が提供できて、他…

戦略とマーケティングのkey questions

MBAでは、繰り返し、以下の3つの質問を考える訓練をする。いろんなフレームワーク、理論があるが、突き詰めると以下の質問に明確に答えるのが、一番大事なことになる。 ・To Whom:顧客は誰で、その満たされていないニーズは何か? ・What : 商品・サービス…

使命、行動指針、ビジョン、戦略との違い

ただの頭の整理ですが、使命、行動指針、ビジョン、戦略との違いをまとめました。 ・使命(mission):存在意義 ・行動指針(Values and principles):何に価値を置き、どのように行動するか ・ビジョン(vision):ありたい姿 ・戦略( Strategy)の目的:ビジ…

商社の若手は理解してるか? 戦術と戦略の違い

まず、定義から。以下の通り。 ・戦略(Strategy):目標達成のためのリソースの配置に係わる全体計画。長期。 ・戦術(tactics): 個々の具体的な方法・手段。短期。 実はこの線引きは明確でなく、よく新聞や会社でもこの2つを混同しているなと 感じるこ…

戦略論 業界の定義 どこまでが同じ業界か?

5Forces、3C、SWOT等の業界分析を行う際に大事なことは、適切に業界を定義することである。単純に製品(自動車、時計)=業界ではない。 業界分析を行う際の業界の定義は“「互いに代替可能な製品をつくっている会社の集団」”となる。この代替可能性は需要と…

M&Aでよく聞く “香水をつけた豚”って何?

M&A

M&Aをやっていると、Sellerは当然高値で売りたい為、事業計画等をお化粧してBuyerに出すことになる。 これを「香水をつけた豚」とか言ったりする。基本的な手口は以下の通り。(下にいくほど見破るのが難しい) 1.将来の成長を過大(楽観的に)に見せる。 …

事業会社のM&A担当はおさえたい M&Aの儲け方

M&A

投資の儲け方は以下の4つしかない。事業投資をやる際に自分はどこで儲けようとしているのか、頭の整理が必要。 1.安く買って高く売る 企業買収をする際に本来価値に対して安く買う。(現金化を急いでいる売り手の足下をみて買いたたく等)and/or 売り際に…

表明保証(rep & warranty)があるのになぜデューデリジェンスが必要か?  M&A

M&A

うちの若手Aの質問「Sellerは金持ちで、表明保証してくれるのに、どうして会計士・弁護士雇って手間暇かけてDDやらないといけないのですか?」 自分で考えろと蹴りを入れる代わりに、丁寧に説明すると、 1.表明保証違反は実際に払ってくれるかわからない。…

マルチプルとDCFの関係

「PERの理論的根拠」で、PER=1÷(WACC△成長率) であることを説明した。これの意味するところは、マルチプルとDCFは逆数の関係にあるということ。 噛み砕いて言うと、マルチプルは、現在の株価が正しいという前提の下、(WACC▲成長率)を予想するもの。一…

EBITDA倍率の理論的根拠 Valuation M&A

前回のPERの理論的根拠とほとんど同じだが、EBITDA倍率(12倍)が何を意味するか。 EV=EBITDA×12倍 ・・・① ①の12倍を%に変換 8.3%=1÷12倍 EV=EV=EBITDA/8.3% ・・・・② FCFはEBITDAを税後にしたもの。税率30%と仮定してEBITDAをFCFに置き換える。 E…

PERの理論的根拠 Valuation M&A

PERの理論的根拠は以下の通り。 株式価値(MV)=純利益×PER(倍率)・・・① Terminal Value(TV)の計算式は、FCF÷(WACC△成長率)であるが、 MV=terminal Value(TV)、FCF=純利益と仮定すると、 MV(TV)=純利益(FCF)÷(WACC△成長率) となる。・・・② ②…

DCF Terminal Value (TV)の計算 設定時の注意点  

TVは最終年度のFree Cash Flow(FCF)÷(WACC▲成長率)。超基本となるが、TV算出に使用するFCFのベースとなる減価償却と設備投資を均衡させなければならない。 事業計画は、事業が安定する年度まで作成するのが基本。よって、事業が成長段階を終え、Capaxも基…

有利子負債コストの推計 WACC DCF

負債コストの推計(データ収集)は実務では以下の順序で行う。 1.対象会社の借入コスト(DDで調べる) ポイントは、以下の通り。 ・親会社がいても、その信用力に依存しないスタンドアローンベース。 ・負債コストの数字を取る時は、リスクフリーレートの年…

CAPMとアンシステマチックリスク   

アンシステマチックリスクとは、ポートフォリオ、つまり資産を複数持つことにより軽減できるリスク。別の説明をすると、業界や事業内容に関係なく、対象会社の固有のリスク。例えば、不正会計等の不祥事、集団訴訟、敵対的買収をしかけられたとか、空前のヒ…

類似企業の選定基準 WACC DCF

Valuationでは、対象会社のベータやマルチプルを類似企業の株価から推定する。では類似企業をどう選ぶか、選定基準が問題となる。 まず、選定基準を考えるに当たって、どの点で類似であるかを考える必要がある。ベータやマルチプルは、突き詰めると、期待収…

アンレバードベータとは何か? DCF WACC

βはその企業の事業リスクだけでなく、その企業の財務上のリスクも表している。同じ事業をしていても、有利子負債が多ければその分株主へのリスクが高まりそれがβに反映される。よって事業リスクだけを見るには、有利子負債の影響を除く必要がある。 実務は、…

類似企業は何社必要か?  

β(ベータ)を算出するのに使う類似企業は、数学的には数が多ければ多いほどよい。 マッキンゼーの「企業価値評価」を引用すると「有利子負債のない場合の業界βが同じ分布から算出されるなら、業界平均の標準偏差は、β分布の変動率を、データ数の平方根で割…

なぜ中央値を使うのか?

Valuationで類似企業のデータを取る時に平均値ではなく、中央値を取るのはなぜか?類似企業の中には、他社の数値のかけ離れた異常値があることはままあり(例:5社のβが0.6-0.8のレンジなのに、1社だけ1.5)、平均にしてしまうとデータがゆがむため、平均で…

DCF のβ算出にはどの市場データを使うべきか?

対象株式を株式市場と比較してβを出す場合は、株式市場は何のデータを使うべきか。日本株式であればTopix、米国株式ではS&P500が一般的。一方、途上国の場合株式市場が未成熟であることから、そもそも類似企業が上場してなかったり、データ自体が揃ってなか…

DCFの場合、事業計画は何年分作ればいいか?

一般に5-10年分作成すると言われるが、私の考えは事業の成長が安定するまでが正解となる。ご存知の通り、事業計画以降の数字はTerminal Valueでより価値を見込むがFCF/(WACC-成長率)で計算することから分かる通り、成長率の1つの数値である。つまり、…

DCF Terminal Value の計算にマルチプルを使う根拠は?

Terminal Valueの計算には最終年度のFCFを(WACC▲成長率)で割って出すやり方と、EBITDAを類似事業者のEV/EBITDAマルチプルで乗じて出すやり方の2通りがある。因みに、Terminal Valueをマルチプルで算出する根拠はということ、数年後成長企業になったあとは…

買収プレミアムは払わないといけないのか?

「M&A取引の本質」「コントロールプレミアムとは何か?」の際に、買い手は買い手独自の事業計画を作成し、そこから生み出したシナジー等のCashを原資に売り手にプレミアムを払う説明をしたが、そもそもプレミアムは払わないといけないのだろうか? 答えはYES…

クロスボーダー取引で必須の NYU教授Damodaran の理論と使い方

前にも紹介したとおり、リスクプレミアムのデータベースとしてNYUの有名教授であるDamodaran教授のデータベースが使える。(データ更新は半期に1度) http://pages.stern.nyu.edu/~adamodar/New_Home_Page/datafile/ctryprem.html 数字の見方を説明する。Dam…

リスクプレミアム DCF CAPM

市場の期待収益率とリスクフリーレートの差。(つまり、投資家にとって、株式市場は株価の変動があり国債よりもリスクが高いことからより高い利益を期待する。) 通常は、ibbotson社が提供するhistoricalデータを使用する(つまり、過去うん十年遡って各株式…