MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

商社のポートフォリオ

資産運用の本を読んでいたら、株式投資のリターンの70%はアセットアロケーション、つまりどこにお金をはるかであり、我々が日々血眼になっている、いつ売り時か、安い時に仕込むというのは、実はそこまでリターンに聞かないらしい。

 

その考えていくと、総合商社も投資資産のポートフォリオであり、個別案件の入れ替えよりも

実はどの部門に何%アセットをアロケートするかの方が実は重要なのかもしれないなと

考えたりしました。ちなみに、資源/非資源とかいうくくりで商社が比較されますが、実は世界のコングロマリットとの比較では、日本の商社はほとんど差がないのも事実であり、

もっともっと特色を出そうと思えば出せる気もしてます。

best owner

久しぶりの更新で大変失礼しました。今年ボチボチ更新しようと思います。

 

投資会社が投資ポートフォリオのEXITする考え方でBest Ownerというのがあります。つまり、投資先にとって、自社がベストな株主かで継続保有するかどうかを考えるということです。たとえば,

親会社の事情で、成長資金を提供できない等の事情がある(子会社の成長が止まる)、あるいは、A社に売り渡した方が、A社ビジネスとのシナジーで子会社の成長を促進できるといった感じです。

 

これだけ聞くと、なんか子のために一歩引く、健気な親の姿が目に浮かびます。また、よく聞くのは、子会社の成長はわかるが、子会社の連結PLがないと決算が作れないよなんて声が聞こえます。

 

でも私が思うに、Best ownerに売り渡すのは親会社にとってもメリットがあるんです。

 

つまり、Best Ownerは今より企業価値を大きくできるとせば、そのシナジーの一部を買収価格にのせてくれるわけです。とすると、売り手は、継続保有するよりも大きい対価かが得られるというメカニズムになります。

 

ということで、Best Owner理論は親会社・子会社の双方の幸せにつながる考え方になります。

 

マルチプルの分析

前回、Transactionマルチプルの説明をしました。これはライバル企業のA社はB社に昨年EBITDA10倍で

買収されたので、我々が今買おうとしている会社もEBITDA10倍で評価しようというものです。もし、ターゲットとA社が類似企業であるとすると、市場の目線の参考になるので、相場感を知るうえで有用といえます。一方で、まず本当に類似か?という問題。(テスラとトヨタは同じ自動車業界でも成長余力は違うし、トヨタと日産だって競争力が違います) その業界全体のトレンド、マクロは参考になるとして、会社によって今後の成長スピードは当然異なります。 さらに、シナジーについては買い手によって、当然Valueが違います。B社がA社を買うことに

よる創出できたシナジーを自分が同じことができるかは全く別問題ですよね。

 

なので、単純にBが10倍で勝ったから、自分も10倍で買うのではいけないのです。上記を参考に自分で違いを理解しながら、分析をすすめ、本当の価値にたどり着くのがゴール。

類似取引 EBITDAマルチプル

EBITDAマルチプルにもTradingマルチプルとTransactionマルチプルがあります。Tradingマルチプルは類似の上場企業の株価から算出したマルチプル、Transactionマルチプルは過去数年の類似業者のM&Aの取引事例です。(ライバル企業のA社は昨年10倍で買収された)

 

Transactionマルチプルは基本は100%買収等支配権を取るDealなので、DCFではじき、シナジーも上乗せした買収しているので、マルチプルは高めに出るはずです。

EBITDAマルチプルの種類

前回、EBITDAマルチプルは、EVを直近決算のEBITDAで割るのか、翌期の予想で割るのかで当然数値が異なるという話をしました。投資銀行の実務では、実績と予想の両方を使い、レンジで出すということをやっていたりもしますが、本来的には、予想のEBITDAがより正確といえます。というのは、株価は当然将来の業績予想を元に値段がつくからです。EV100、前期のEBITDAが10なら10倍。予想のEBITDAが20な5倍です。この予想数値の確からしさにもよりますが、投資家はこの20という収益をベースに株価を考えるわけです。

マルチプル

なんか、ばたばたしていて久しぶりの更新になります。失礼しました。Dealをやる中で、Multipleについて自分なりに理解が深まったことがあるので、何回かにわけてシェアさせていただきたいと思います。

 

まず、EBITDAマルチプルの定義です。よく、社内で会話すると、“この業界のEBITDAの倍率は9倍”みたいな会話があります。私のCounterpartの問題かもしれませんが、その根拠を聞くとなんとなくだったりします。しかも、EBITDAマルチプルは、EVを直近決算のEBITDAで割るのか、翌期の予想で割るのかで当然数値が異なり、これもあいまいだったりします。なので、いつ、どのDealで、EVはいくらで、いつのEBITDAを使ったのかを調べないといけません。当然、世の中に同じ会社はないので、会社の違いも反映させる必要があります。きちんとしたファクトファインディングがすべての出発点ですね。

マーケットリスクプレミアム ご質問

いつも、ネタがなくても困っているところ、ありがたいことにご質問をいただきましたので、以下回答します。

 

(質問)

2016年9月7日のブログで(ちょっと古いですが)、「先進国 の株式市場のリスクプレミアムは大体5-7%程度(私の感覚)。 」とありました。一方、東証のVolatility Index(VI)は22%前後で推移しています。自分の理解では、 VIと株式市場のリスクプレミアムは理論的に一致するものと思っ ていましたが、その「5-7%程度」と22% の差はなぜ発生するのでしょうか?

 

(回答)

結論からいうと、データの対象とする期間の差(1ヶ月 VS 20年)と思います。

 

まず、私はVIについてあまり明るくなかったのですが、以下のサイトを見ると、向こう1ヶ月の変動率を先物のデータを使って算出したものと理解しました。

https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index/profile?idx=nk225vi

 

一方で、マーケットリスクプレミアムは、投資家が株式市場から期待する超過リターン(リスクフリーの国債に対して)を意味します。このデータの1番オーソドックスな算出の仕方は、日本であれば過去20年、30年東証に投資していたらいくらの利回りが出たかを

実際に計算するやり方。過去のリターンが今後も続く前提で投資家は期待利回りを決めるということで、これが5−7%程度になります。足下はもう少しひくいと思いますが。

 

ちなみに、このデータはイボットソンという会社が有料レポートを出していて、証券会社や商社はこのレポートを買って、マーケットリスクプレミアムとして使っています。個人的ではとても買えないのですが、日本では大体5%ぐらいですし、20年とか平均を使うのでそこまで動きません。

 

もう一つのやり方は、Forwardーlookingで、IESE Business Schoolが出しているレポートは機関投資家ヒアリングして集計したもので、この類になります。無料で、このレポートだと日本は6.2%ですね。

https://poseidon01.ssrn.com/delivery.php?ID=307022073101112070087017111103091068053092085093022062113106085081027125009065090119029121027118122097010075004072094090005010008022074062017003081006079019107069058051106005122075089069127072006127085023073089031004120076030085112067122001110117&EXT=pdf

 

あと、無料のデータベースだとDamodaran(http://pages.stern.nyu.edu/~adamodar/)も便利です。

 

以上、参考になれば幸いです。