MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

海外 M&Aの難しさ

一般的に海外、クロスボーダーのM&Aの難しさは、情報の非対称性だったり、法制度や文化の違い等があげあれるが、私からすると、日本の本社人材が使えないということだと思う。

 

国内の会社であれば、社長はもちろん、マーケや販売が弱ければ適当な人物を出向させればいいが、海外の場合はいわばこういった即戦力が活用できないためTurn aroundが難しいということだと思う。(もちろん、出向者はいるが、言葉・人種の問題から、実務には入らず、計数系のとりまとめの仕事が多いと思われる)

 

従い、ファンド的に経営人材のプールを抱え経営者をすげ替えるといったアプローチをするか、時間をかけてローカルの人材を育てることのどちらかが必要であるが、どちらも日本企業はいまだにうまくいっているケースは少ないですね。

 私の勤める会社でも20年前ぐらいからMAを繰り返している事業では、結構米人の人材プールが厚くなっているのもあり、彼らにDealをやらせると人脈といい、情報といい、スピード感といい、日本人ではとても追いつかないQualityでMAをやってくれたりします。もちろん、これがポイントなのですが、20年の歴史もあり、米人が我々の考え方やポイントを完全に理解してやってくれています。 こなると、かなりいい感じです。

 

もっとも、まだまだ数が少なく、また明確な方向性をもって、長い年月をかけて育てていくことが必要なので、このPracticeを拡大するのはそう簡単でありません。

ESG経営

今、はやりのESG経営。個人的にはアングロサクソン的で好きではない。頭の中が金しかないアメリカの経営者にバランスを取らせるためにESGとか役に立つのであって、日本や欧州の経営者はもっと高い視座で会社を見ているように思います。 それをありがたがっているのか、押し付けられているのかわかりませんが、取り入れようとしているあたり、なんだかなーと思ったりしてます。

記事 高値掴みの買収

https://diamond.jp/articles/-/223323?page=2 

記事自体は入山教授の新しい本の紹介で、私も一度読んでみようと思いますが、その中に間違った内容があったので、以下コメントします。因みに、私の座右の書グラント(お勧め書籍 戦略本 - MBA x 総合商社道場)がディスられているのが気になりますが。

 

以前の記事(M&A コントロールプレミアムとは何か? - MBA x 総合商社道場)にも書きましたが、買収プレミアムは30%が相場というだけで、この掛け算で買収価格が決まるわけではありません。つまり、事業計画をつくり、シナジーをそれに織り込み、DCFで算出した金額と株価の間で買収価格は決まるものであり、その価格が統計的に30%に落ち着いています。従って、80%のプレミアムを払ってもその分シナジーがあれば高値掴みでもなんでもなく(もちろん、このシナジーが絵にかいた餅でないことが前提)、一方、先日の大塚家具のように今の株価よりディスカウント(大塚家具 ヤマダ電機 株価分析 - MBA x 総合商社道場)になっているから安いというわけではありません。

(引用)

その理由を、買収プレミアムを例に取って説明しよう。「買収プレミアム」とは、企業買収(M&A)において、買収する側の企業(買収企業)が買収金を払う時に、買収される企業(被買収企業)の市場価値に上乗せする額の割合のことだ。 例えば、2014年にサントリーホールディングスが米アルコール業界大手のビームを、160億ドル(約1.7兆円)で買収した。ビームのその直前の企業価値総額は130億ドル前後だったので、サントリーはビームの株主に約25%のプレミアムを上乗せして、同社株を買い取ったことになる。ちなみに、米国の企業買収プレミアムの平均は30~40%程度なので、(他の事情は一定とすると)25%はそれほど高いわけではない。逆に、もしある企業が60%や80%の買収プレミアムを払っているなら、その企業は「高値づかみ」をしている可能性がある。

(引用終わり)

大塚家具 ヤマダ電機 株価分析

このグログでも何度か取り上げてきた大塚家具が、ヤマダ電機との提携が発表されましたね。出資比率は51%を取ったので、大塚家からするとついに家業を人手に渡したということになります。

https://www.ryutsuu.biz/strategy/l121223.html

 

価格については株単価145円と直近の株価が160円程度だったので、若干割引が入った価格になってます。過半数を取るDealなので、教科書で言うとプレミアムが30%乗る形になるはずですが、資金繰りが

しんどい状況だったので、既存株主からすれば潰れるよりはましというところでしょうか。

直近の時価総額が40億円程度だったので、43億円の増資を引き受け、51%なので、ざっくり計算もあいます。

 

報道によると更に新株引受権もヤマダは取得したとのことで、21億円で出資比率は57%まであがるとのこと。単価は243円で今回のラウンドよりも

高くなっており、過半数を取っている以上、この価格で引き受ける意味がヤマダにあるのか私には分かりませんでした。株価が上がると見ているのかな。

 

発表後の株価は292円まで高騰しており、ヤマダとの提携がうまくいけば、業績は回復、更にどこかで非上場化するとせば、そこでTOBのプレミアムが乗るということかもしれません。

 

大塚社長は続投というのは驚きましたが、前述の通り、ヤマダに生殺与奪を握られており、成果が問われる今後になります。

 

しかし、こういう支配権が変わることにより価値を生むというのがM&Aの醍醐味ですね。今回40億円というリスクマネーを投じたヤマダは素晴らしいですし、大塚ブランド、従業員のために是非、成功をお祈りしてます。

環境デューデリジェンス フェーズ1 フェーズ2

環境デューデリジェンスの中味を簡単に説明しようと思います。

といっても、我々投資家は基本やることがなく、ERM等のコンサルが調査自体はやってくれるので、そのレポート結果を事業計画や、SPAに反映するのが仕事になります。

 

まず、初期調査としてデータルームや自治体が持つ情報にアクセスしてデスクで情報の整理をします。その次に実地調査を行いますが、これが2段階に分かれます。フェーズ1でなにもなければ基本調査は終了です。

 

フェーズⅠ調査

実地調査を行い、現在及び過去の活動内容を精査し、ありえる環境問題、汚染の把握をします。現地調査は1-3日程度、レポートを含め、2週間程度。ここで問題が発見されるとフェーズ2に移行します。

 

フェーズⅡ調査

フェーズⅠ調査の結果で特定された事項について、実際に各種サンプルを採取し調査します。現地調査は数日から数週間、レポートを含め、1-2か月程度。

・ 土壌、地下水(ボーリングによる)

アスベスト、PCB

・ 埋設廃棄物

・ 廃水

 

総合商社の課題、将来性ー真のグローバル企業になれるか?

商社で仕事していて、最近すごく思うのは、日本は人口減でマクロでは伸びない市場であり、日本企業の競争力も年々落ちているという事実。もちろん、商社はグローバルにビジネスを展開しているが、それはあくまで日本という切り口があってこそです。たとえば、海外で日系メーカーと組んでビジネスしたり、海外のベンチャーや資源権益に投資するのだって、対日販売があるからこそだったりします。そう整理すると、日本と関係ないビジネスというのは本当に僅かになるのが実態です。従い、冒頭のマクロトレンドを考えると、どうしても競争力が落ちてくるのは否めません。

これのソリューションはザ日本企業である組織や人事制度をごっそり変えないといけません。たとえば、米国〇〇商事に投資権限を渡して、駐在員は今の10分の1にして、あとは大枚はたいてアメリカ人のピカピカの人にビジネスをさせる。そしてネットワークと販売網を育てていく。なんてこを考えたりします。といっても全然簡単でないし、今の良さも失われたりもするんだろうと思うとなかなか難しいテーマではあります。まぁ、考え続けるしかないですね。

 

 

環境デューデリジェンス(DD)の実務

私を含め環境DDというと、技術の話で”どうしよう”となりがちですが、簡単にプロマネ視点で何をすればいいかを書きたいと思います。

通常、環境DDではフェーズ1で、データルームの書類確認(許認可関連書類、過去の地質の調査結果等)と現地視察をします。そこで問題がなければ、DDは終了です。一方で、オイルが地面に染みていた、工業排水が川にそのまま流れていた等が発見されれば、フェーズ2として地質や水質の調査を行うことになります。

環境DDでお金に関連するのは、以下の項目になります。基本的にDDをきちんとやれば、1-4は買収前にわかるので、買収価格の減額を交渉します。ただし、3はMustか否かで売り手と買い手で交渉になる可能性はあります。

5はSPAの補償対象ですね。DD段階で、近隣に住人がいるかを確認することも大事だと思います。

1業法違反による当局からの罰金

2許認可取得費用

3環境汚染の予防設備(CAPEX)

(例:過去はダダ洩れになっていた工業排水用のろ過施設の設置)

4汚染の除去(有害物質のしみた土地の除去、入れ替え)

5近隣住民の訴訟(健康被害