MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

WACCの計算 マーケットリスクプレミアムの取りかた

資本コストはRF+ERP×βから計算される。前回RFの取りかたについて、講義したが、

今日はERPについて。

まず、おさらいですが、資本コストは、RF(つまり国債)に株式投資に対するプレミアムに加算して出します(ベータはまた次回)。つまり、株式はリスクのない国債よりリスクが高いので、投資家はより高いリターン(プレミアム)を要求します。ではこれをどう算出するかというと、一般に過去30年のTOPIXとかS&P500やDowとかのデータを取って、実際に投資家がいくらリターンを得たかを計算します。これが日本だと5%とか、アメリカだと6%とかになっている例が多いです。つまり、アメリカ国債10年が2.8%とすると、これに6%が乗り、8.8%が投資家が株式投資に求めるリターンになります。

では、このえERPのデータはどうやって取るかというと、プロの世界ではIbbotsonという会社がこのデータベースを持っており、これを購入します。では、お金が払えないという人は、以前紹介したDamodaranに記載されてます。カントリーリスクプレミアムで調整すれば日本市場のERPも算出可能です。ありがとう、Damodaran

http://www.stern.nyu.edu/~adamodar/pc/datasets/ctrypremJuly18.xlsx

 

 

 

 

WACCの計算 リースフリーレートの取りかた(番外編)

前回お話したとおり、リスクフリーレートは、評価日時点の国債を使います。資本コストの計算式は、RF + ERP β.という計算式から、RFが上がれば資本コストが上がり、資本コスト(割引率)が上がるということは、企業価値が下がるということになります。

(たとえば5年後の100は3%なら86、5%なら78)

ということで、事業計画に変更がなくとも、国債の上限で企業価値も上下することになります。従い、低金利なら売り時、高金利なら買い時という数式が成り立ちます。

 

WACCの計算 リスクフリーレートの取りかた

資本コストの計算式は、RF + ERP β.です。

では、リスクフリーレート(RF)は何を使うか。一般的には10年国債を使うのが一般的。なぜ10年かというと、基本的な考えは事業Durationにあわせるということになるが、ある程度長期、データのAvailabilityから大体10年を使う。アメリカ国債の場合は20年を使ったりします。国債のデータは検索するとすぐ出てきます。いつの時点のデータを使うかと言うと評価日時点(たとえば2018年9月1日時点の日本国債10年もの)を使うのが一般的ですが、異常値が出ないよう過去3ヶ月平均を使ったりします。

前にも書いたとおり、新興国国債はカントリーリスクがもりもりなので、リスクフリーになっていないので、ドル・ユーロ・円以外は、ドルをベースにWACCを作り、Country risk premiumやインフレを調整するのが一般的になります。

 

WACC マルチプル 類似企業の選定 (所在国が違う場合)

類似企業の選定方法は以前説明したとおり(類似企業の選定基準 - MBA x 総合商社道場)であるが、今日、まったく同じ業態で所在国の違う会社を使っていいか質問されたので、以下回答します。

結論としては、Noだと思います。たとえば、日本のコンビニの評価をするとき、中国やインドネシアのコンビニを類似企業としていいか。確かにビジネスは似ているかもしれませんが、国により当然成長率やリスクが異なります。ベータにいたっては、ボラを算出するベースとなるIndexをどうするかという問題も残ります。従い、たとえ業態が似ていても、使ってはいけないというのが答えになるようです。

 

ファイナンス マルチプルとDCF どちらを使うべきか

以前、話をした通り、両方でValuationするのが基本。マルチプルとDCFの違いを比較し、間違いの気づきの機会にする。

変数がEBITDA、倍率(そのデータの元になる類似企業)のみのマルチプルに対して、DCFは事業計画はもちろんのこと、永久成長率や割引率だっていくらでもいじれるDCFは変数が多すぎなので、個人的にはマルチプルの方が分かりやすいと個人的には思っている。大体、DCFで使う5-10年後の事業計画なんて当たらないだろう。一方、マルチプルは、足元のEBITDAと、倍率も低成長なら5倍、高成長なら10倍とおけば、まぁ、外れない。

一方、DCFが向いているのは、Cash flowが見えているインフラ投資や債権はDCF。例えば、インフラ投資で最初の5年は加速度償却で税メリットがあったり、10年後から収入のフォーミュラーが変わったりし、Cash flowが常に一定にはならないときがある。こういう場合は、きちんと年度毎の計画を作って、DCFで評価しないと正確な価値は図れない。

 

 

逆張り

逆張りができるのは、本当の投資のプロであり、本来ロングタームで物事を考えられる商社は逆張りを本来やらないといけない。しかし、実際は難しい。理由2つ。

 

1、社内説明が難しい

  市況がボロボロのときに、「今が買いです」と言っても、もっと下がるのではないか、だれも儲かってないのに本当?と投資委員会や取締役会での説明が難しいです。合議制を取っている商社では、トップダウンの決定もありません。

 

2、資金

  アナリストも格付会社も、Debtが増えないか、フリーキャッシュフロー(CF)を見ています。つまり、投資CFを営業CFで賄うのが原則。儲かっているときは投資余力があるが、儲かってないとDebtで調達する必要あり。これが高値掴みの構図になります。

 

話はそれるが、個人投資家の強みはこれの逆ですね。説明もいらないし、不況時でもバンバン投資できます。。。

 

大塚家具 株価

 

今話題の大塚家具の株価の分析をします。

 

時価総額は83億円(2018/8/7時点)。

2017/12期の決算は、以下の通り。

現金 18億円

総借入 0億円

自己資本 176億円

総資産 291億円

売上高  410億円 (cf 2015年度 580億円)

粗利益  209億円 (同 308億円)

販管費  260億円  (同 303億円)

営業利益 -51億円 (同 5億円)

減価償却 1億円

EBITDA -50億円

 

1. PBR

まず、時価総額は83億円しかないので、自己資本の約半分。

理論上は、会社清算して配当したら、株価の倍のCashが得られます。

投資家が同社の収益性がいかにないと見ている証左でしょう。

 

2.EBITDA倍率

おさらいですが、EBITDA×マルチプル=EV この会社は借入れがないので、

Net Debtが-18億円。従い、EVは101億円。 そんなに成長しない業態なので、

倍率はざっくり5倍おくと、EBITDAは約20億円程度が欲しい計算になります。

現状、EBITDAはー50億円なので、70億円の収益改善が必要。販管費は200億円

なので、コストカットでこの問題を解決するのは難しく、本質的には売上と粗利益が

必要となります。こうなるとファンドも手は出しつづらいし、名前が挙がっている

貸し会議室の会社とか家電の量販店ではとてもTurn aroundは難しいかと。

んー、なかなか難しいステージに入ってきています。