MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

クロージングにおける価格調整方法 その3  M&A

以前、以下の記事を書きましたが、いくつか質問を受けたので追記します。

クロージングにおける価格調整方法 その1(Locked Box 方式) M&A - MBA x 総合商社道場

クロージングにおける価格調整方法2(Completion Adjustment 方式) M&A - MBA x 総合商社道場

 

Q1.この2つの使い分けは?

   基本となる考え方は、売り手から買い手へのリスクの移転を契約時にするか、クロージング時にするかという点。会社は生き物なので常に変動しています。従い、在庫が増えたり・減ったり、儲けたり、損したりするわけです。 契約時点でこのリスクを買い手に移転させるのが、Locked Box、クロージング時点で移転させるのが、Completion Adjustmentです。

 

あとは実務的な問題として、Completion Adjustmentは譲渡価格が最終的に決まるのが、クロージングから数か月後になったり、そもそもAdjustmentの作業(監査報告書作成の事務、交渉、調整のための送金や回収リスク)等が面倒というのもあります。

 

それでもなんでやるのかというと、買い手が契約からクロージングまでの期間のリスクをヘッジしたいということにつきます。

 

Q2 Completion Adjustmentって何と何を調整するの?

その2で説明したとおり、Net DebtとWorking Capitalについて”契約書で握った基準”と監査レポート記載のクロージング時の残高の差を調整します。

”契約書で握った基準”は、売り手と買い手が契約書で合意した内容になりますが、通常はNet Debtはクロージング時の予想、Working Capitalは正常運転資金(回収サイト、支払いサイト、在庫期間から計算された理論上の運転資金)になります。

ただ、買い手が立場が強いときは、評価基準日(たどえば、クロージングが2019年12月末でも、評価基準日が前決算期末の2019年3月末)のNet DebtとWorking Capitalを使ったりすることもできます。(売り手にとっては、社内申請と数字がずれなくなるので便利だったりします)