M&A 補償条項 (Indemnity Clause) の基礎知識
買収した後に、表明保証違反やコベナンツ違反等が発覚したときは、買い手は売り手に補償を求めることになります。
金額の設定について、いくつかポイントがあります。
上限(Cap):
補償額の上限です。ケースバイケースですが、一般的には取得金額の10-20%程度が多い気がします。100億円のDealなら10-20億円ですね。Capを超えた分は補償してもらえないので、注意が必要です。特にDealサイズが小さいと(たとえば取引金額5億円の20%は1億円)、Capをすぐ超えてきてしまうので、注意が必要です。
以前、ネゴでこちら(売り手)が10%、買い手が30%を要求、最終的には間をとって20%みたいなことがありました。お互い20%を意識していたのかもしれません。
バスケット(Basket):
損害賠償の金額が一定金額を超えた場合に、この一定金額を超過した金額を補償金額するもの。(一定金額を超えた場合に当該金額全額を補償金額とするものもあります)。相場は1%なので、100億円なら1億円ですね。
買い手からすると1億円未満は自身で負担しないといけないので、私が買い手のときは当然、入れないベースで交渉します。
デミニマス(de mini mis または mini-basket):
1件当たりの補償請求額の足切り。きめの問題ですが、100万円以上とか。結局、細かいものまで請求となると実務的に大変なので、100万円以下は補償の対象にしないというものです。
一方補償条項には期間があります。売り手からすると売却したのにいつまでも義務から解放されず、当たり前ですね。
一般に、補償期間は、クロージング後12-18か月、税務だけは税務の時効の7年が多いような気がします。やはり決算をするとボロを見つけやすいので、補償期間内に決算(決算書作成のリードタイムを含む)があるかを要確認です。
契約によっては、税務、環境、環境汚染、一般(それ以外)のカテゴリーで、補償の金額と期間を細かく設定するケースもあります。
以上のように、M&Aにおいてはスーパーの買い物と異なり、買い手は返品ができないので、補償請求は問題があったときの最後の手段になります。一方、売り手は売り手で、売却した後に、潜在債務が残るので、これはこれで、あとからがっつり取られないようにしないといけません。もっとも、今までかなりの数のMAをやってきましたが、補償を請求したこともされたこともありませんが。。。
因みに、売却した際に、一切の債務から解放されるclean dealにしたい場合は、損害賠償保険という保険を買う方法もあります。時間があるときにまとめようかなと思います。アメリカではかなり一般的です。