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MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

価格調整方法2(Completion Adjustment 方式)

ファイナンス

前回の続きとして、価格調整方法の2つ目、Completion Adjustment 方式について説明する。

M&A取引は時間がかかるものであり、価格評価の基準日(例2016年3月期)とクロージング(例2016年12月末)にタイムラグが生じるのが通常であるが、その間、株式価値算出のベースとなる有利子負債と現金も当然ながら変動する。例えば、3月時点では企業価値(EV)10億円、純有利子負債(net debt)3億円で株式価値(MV)を7億円で握っていたが、クロージング時点でnet debtが4億円に増えて、MVが6億円になっていたりする。(契約通り7億円支払うと1億円損をする)

これを調整する為に、Completion Adjustment 方式と呼ばれるやり方があり、クロージング日において、買収対価を一旦仮払いし、その後、会計士も入れてクロージング日におけるBS作成(買い手は通常Auditする権利も有する)し、それに基づき最終的に買収対価が確定し、仮払金額との差額を売り手と買い手の間で精算されます。尚、調整は±両方あり、払うこともあればもらうこともある。

では、何を調整するかと言うと、まず純有利子負債。予め握った予想有利子負債と実際のクロージング日における有利子負債を比べ、クロージング日における有利子負債が増えていれば、MV=EV-Net Debtから買収価格は下がり、減っていれば、買収価格は上がることになる。

加えて、運転資金も調整対象となる。本来、EV=MV+Net Debtからすると有利子負債だけでもいいような気がするが、運転資金も調整対象。なぜなら、買主は、買収後に買収した事業が十分な運転資金を有しておらず、買主がクロージング後に追加の出資を余儀なくされるリスクをヘッジしたいため。(例えば、2016年12月末に通常1億円程度在庫を持つ商売で、たまたま在庫が全て売れてしまった。翌月にはまた在庫を買わないといけない為、1億円の運転資金が必要)

具体的には、過去データ等をベースに過去のレベルに運転資金の目標額を設定し、クロージング日のBS上の運転資金が目標額を上回れば買主が売主にその差分を追加支払い、下回れば、売主が買主にその差分を戻すことになる。

先ほどの1億円の例で言うと、在庫が売れて現金が1億円を得てNet Debtは減る。一方、在庫が減り1億円分運転資金が減り、結果行って来いでNet では価格調整±ゼロになる。

因みに、何をもって有利子負債、運転資金とするかは後々紛争の元になるので、SPAでは「運転資金=棚卸資産+売掛債権+現金-買掛債務」みたいに勘定科目を書いてしっかりと定義する。