MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

ZOZO 前澤社長 業績下方修正

以前ライザップについて、増資をして品がないといいましたが、

ライザップ 会計知識の必要性 - MBA x 総合商社道場

 

 

今回はZOZO。

https://www.wwdjapan.com/articles/1022287

 

記事によるとわずか1年半で時価総額は1.5兆から3分の1程度におちこんだとのこと。

前澤前社長からの自己株取得価格が、株価3,845円。今の株価は1582円。

というか、自己株取得が2018/4、そのわずか半年強の2019/1に業績下方修正で

ほとんど株価を今の水準ぐらいまで下げていたんですね。

んー。節操がないというと言い過ぎか。

M&A デューデリジェンス 弁護士・会計士等の通う方法

私の経験では、DDにおいて、クライアントである買い手から気になるポイント、調べて欲しい点を明確に伝えることが大事だと思います。でないと、DDを依頼された弁護士・会計士は、網羅的に問題を列挙することとなりがちで、本来深堀りすべきリスクの精査が不十分となる虞があり。

 

そもそも、DDを網羅的と言っても、所詮は対象会社の一部しか見えない。(昔、元GCAの佐山さんが“雪”の下の部分だけを見せて、“何に見えます?”ヨ“じゃなくて、雪ですよと講習で言ってました) 従って、質問リストである程度のメッシュで最低限のポイントを抑えた後は、特定テーマについてゴリゴリ調べた方が、成果あると思います。ビジネスDD等も同様です。

三菱と伊藤忠

三菱商事伊藤忠

 

数字を比べてみました。こう見ると、三菱のBSのサイズは伊藤忠に限らず、他商社比で圧倒的に大きく、時価総額もダントツの一位です。

 

伊藤忠は、資産効率が抜きに出ていて、BSサイズが三菱の6割ですが、利益では肉迫していますね。不採算のアセットの比率が低いのが要因かと思いますが、時間があるときに調べたいと思います。

 

三菱

総資産 17兆円

今期連結利益予想 5200億円

時価総額 4.5兆円

PER 8.5

PBR 0.8

 

伊藤忠

総資産 11兆円

今期連結利益予想 5000億円

時価総額 4.0兆円

PER 7.7

PBR 1.3

前田道路 敵対的TOB

前田道路が前田建設によるTOBに反対し、敵対的TOBに発展したようです。「当社の収益力は圧倒的に上回っている」とか「資本市場からの評価が乏しい企業によって経営される」とか言いたい放題です。日本もいよいよ米国のようになってきましたね。

ちょっと、調べたら、前田道路は前田建設に設立された子会社ではなく、元々独立の会社が資本提携し現在の形(現在の保有株式は25%弱)になっており、役員も1名を除き、社長含めプロパーの方なので、元々独立性が強い会社のようです。

ということで、前田建設の目線でいえば、全然言うことを聞かなかった関係会社の過半数を取り、主要ポジションに人を送り込み、親子間でシナジーを生み出すという絵であり、そのシナジーの表れが、TOB発表前の株価2500円弱に対して3950円という1.6倍の価格を付けたということでしょう。

前に触れた通り、通常TOBの場合のプレミアムは20-30%であり、60%は中々の水準。このレベルだと、ホワイトナイトとしては、ファンドは無理で、事業会社がメインになりますが、そうなると前田建設はダメで他のゼネコンならいいのかという話になる気もします。

 

あとは、自己株取得でしょうが、自分で買うだけなので、シナジーは当然なく、あとはTOBによるディスシナジーでどれだけ説明できるか。

 

いずれにせよ、前田道路の経営陣にとっては、難しい選択ですね。しかし、一人だけいる前田建設出身の役員は針の筵でしょう。

 

 

 

 

キーマン条項 M&A

会社を買収する際、たとえば、DDをしてみたら、有能な経営者や技術者等がいて、その会社のオペレーション・企業価値に大きな影響力を与えているというケースがあります。こういう場合、買収後一定期間(通常2-3年)会社にとどまってもらうという条項、キーマンクローズを入れることがままあります。

 

一方で、この条項は、創業者が大企業に会社を身売りするケース、つまり、売り手とキーマンが一致している場合はいいのですが、そうでない場合は難しい問題が生じます。

 

というのは、キーマンのリテインを契約で確保しようと思うと、キーマンとの雇用契約締結をSPAのクロージング条件にするか、SPAと同タイミングでキーマンとの雇用契約を締結してしまう(クロージングが発行条件)の2つがありますが。しかしながら、現実的には難しいことが多い。

 

前者については、売り手からすると、買い手がキーマンにどんなオファーをするかわからず、またキーマンが買い手の下で働きたいかも不明。従い、なんかの理由で、買い手からキーマンが逃げたので、この取引はできませんというのは少し受け入れがたい契約と思います。もちろん、たとえば、有名タレントとかデザイナーとか売り手も納得するような、名実共にその会社価値=その人みたいな感じであれば、キーマン条項は飲んでくれる可能性あります。

 

後者については、STIPやLTIPの細かい条件を固めようと思うと、シナジーの内容に触れないといけないので、SPA前に、売り手がどんなシナジーを見ているか、相手方にばれる可能性があり、これはこれでリスク。

 

従って、我々ができることは、Baseやボーナスの金額(詳細条件は前述のリスクがあるので握れない)、用意しているポストを提示して、Bindingにはならないものの意思確認をきちんと行い実態をきちんと押さえていくというのが大事になると思います。もちろん、クロージングしたものの、やっぱ辞めたというリスクはあります。

 

 

M&Aの経験値、ノウハウをどう高めるか 

どの事業会社でも、M&Aの経験値、ノウハウをどう高めるかについて、いつも頭を悩ましていることと思います。FAを雇ってもDealを成立させてくれても、特にビジネスDDの精度が高くなるわけではないし、コンサルを雇って調査させても、依頼する我々がちゃんとしてないと、きちんとした成果物は得られません。

私としては2つのアプローチをお勧めしたいと思います。

1つは、まず小さい規模のDealをやる。本命の会社を買う前に、失敗しても許されるサイズで買収してみると、仮説と検証プロセスや買収後に問題となった事項を学ぶことでDDの精度を高めることができます。また買収した会社のメンバーも本命の買収に活用できるので、業界知識も補強できます。難点は、そんな都合のいい案件があるのかという点ですが、私の経験では、そういう案件がないことはないかなと。

 

2つめは、売却案件を通じて、買収が上手と言われている会社やPEのDDをSellerの立場で受けてみること。彼らの一流のビジネスDDを受けることで、学ぶことがかなりあるはずです。

M&A いかに高値掴みを回避し、安く買うか。 番外編 HOYAの鈴木CEO「しょうがない」

先日アップしたM&A いかに高値掴みを回避し、安く買うか。 - MBA x 総合商社道場に関して、HOYAの鈴木CEOの記事が出ていたので、シェアします。

東芝とTOB合戦、敗れたHOYAの鈴木CEO「しょうがない」:日経ビジネス電子版

随所にM&Aに対する経営者の心構えはかくあるべしと思う、コメントがありました。

・買うためにTOB値上げを考えなかったのかという問いについては、「ないですね。それは結局うちのリターンが減るということですから。」とか、

・価格についても、リターンを逆算して決める。価格をどんどん上げていくと、うちにとってリターンのない投資をすることになり、うちの株主の価値を毀損してしまいます。その意思はありません」とか

・「自分で決めた価値でしかディールは進めたくない会社ですから。「マーケットフェアバリュー」とか、売り主がいくらで売りたいかとかはあまり関係ないんです。」とか

・ものは安く買って高く売るのが一番いいので、機会を待つしかありません。