M&A いかに高値掴みを回避し、安く買うか。
買収価格が高くなればなるほど、減損リスクが高くなるだけではなく、買収後の資金余力がなくなり、さらなる成長のための投資等も困難になる等の弊害あり。
安く買って、高く売るのが基本中の基本であり、ではどうすればいいのか、難しい問題ながら、以下私の解決策を書こうと思う。
・交渉前にwalk away priceを決める。
過去のDealで値上げに応じず一旦Breakしたあと、半年後売り手が戻ってきて希望の価格で買えたことがあります。
・買収前と買収後の責任者を同じにする。
これを別の人間にすると、Dealのクローズさせればいいという無責任主義がはびこります。
・普段から買収候補先と仲良くなって、相対に持ち込む
私の知っている例では7年越しでラブレターを書き続けたケースを知っています。
・時期を待つ
自分がその業界にいれば、業界のトレンドが分かるはず。業界のサイクルを見越して、不況時に案件を仕込むと当然ながら安く買えます。でも、一般的には、そのタイミングは当然自分の業績も厳しく投資資金の調達や社内外への説明が難しいはずなので、言うほど簡単ではありません。
walk away price の難しさ M&A
交渉前にwalk away priceを決定するというのは、超当たり前のプロセスながら、実は実行するのがとても難しいです。
というのは、以前、DCFの回でも説明したが、DCFでは前提の置き方で数字がめちゃくちゃ変わるし、シナジーも実現性を無視すればいくらでも織り込めるので、結局walk away priceを設定するとして、売り手の要求金額にMeetしようと思えばMeetできてしまうことになります。
結局、経営者がどこまでDisciplineをきかせられるかにかかってきてしまいます。当たり前ですが、「死んでも、このDealを落とすな」とトップが大号令をかけたら、サラリーマンは止まりません。
DD デューデリジェンス どうすすめるか 網羅性とピンポイント
DD デューデリジェンスをやるうえで、いかに大事な点にフォーカスするか。プロマネは、DDを始める前に、DDの大事な点を明らかにしないといけません。
Key questionは以下の3つ。
Is base case is Sustainable?
Is downside is manageable?
Is significant upside Available?
この3つの質問にそって、大事なポイントを3-5個選ぶ。(多くても7つぐらい) できるだけ、それにフォーカスして深堀する意識を持ちたい。
もちろん、会計士や弁護士には、DDで最低限必要な項目は当然カバーしてもらうにして、Buyerとして気になっている点については、きちんとDDのキックオフで伝えることも大事。
ゴーン氏 脱出劇
カルロスゴーンの報道が連日されていて、おもしろいですね。有罪率99%の日本の司法の闇を考えるとゴーン氏が国外逃亡したくなるのもよくわかりますし、一方、潔白ならなぜ逃げるというのも正論で、なかなか難しい。
私が思うのは、カルロスゴーンってビジネスマンとしては一流だったんだろうなということ。なんというか、常識にとらわれずに高い目標(国外逃亡)をかかげ、その目的にむかいtenetiousに、ここまでかと行動し、且つ、途中でばれるかもしれない(出獄時の変装みたいに)リスクもとり、且つ、その大博打に勝つという運。どれも凄すぎます。
私だったら、いくらでも払うし、罪もみとめるから、早く普通の生活をさせて欲しいとしか思わなそう。
日本の経営者って、松下さんとか稲森さんの影響もあるのかもしれないが、なんとなく人格者を求めてしまうが、ゴーンさんとかジェックウェルチとかもそうですが、部下からすると、”彼の部下であったときが人生の最悪期”みたいな感じで、かなりアクの強い人が多い印象ですね。
海外 M&Aの難しさ
一般的に海外、クロスボーダーのM&Aの難しさは、情報の非対称性だったり、法制度や文化の違い等があげあれるが、私からすると、日本の本社人材が使えないということだと思う。
国内の会社であれば、社長はもちろん、マーケや販売が弱ければ適当な人物を出向させればいいが、海外の場合はいわばこういった即戦力が活用できないためTurn aroundが難しいということだと思う。(もちろん、出向者はいるが、言葉・人種の問題から、実務には入らず、計数系のとりまとめの仕事が多いと思われる)
従い、ファンド的に経営人材のプールを抱え経営者をすげ替えるといったアプローチをするか、時間をかけてローカルの人材を育てることのどちらかが必要であるが、どちらも日本企業はいまだにうまくいっているケースは少ないですね。
私の勤める会社でも20年前ぐらいからMAを繰り返している事業では、結構米人の人材プールが厚くなっているのもあり、彼らにDealをやらせると人脈といい、情報といい、スピード感といい、日本人ではとても追いつかないQualityでMAをやってくれたりします。もちろん、これがポイントなのですが、20年の歴史もあり、米人が我々の考え方やポイントを完全に理解してやってくれています。 こなると、かなりいい感じです。
もっとも、まだまだ数が少なく、また明確な方向性をもって、長い年月をかけて育てていくことが必要なので、このPracticeを拡大するのはそう簡単でありません。
記事 高値掴みの買収
https://diamond.jp/articles/-/223323?page=2
記事自体は入山教授の新しい本の紹介で、私も一度読んでみようと思いますが、その中に間違った内容があったので、以下コメントします。因みに、私の座右の書グラント(お勧め書籍 戦略本 - MBA x 総合商社道場)がディスられているのが気になりますが。
以前の記事(M&A コントロールプレミアムとは何か? - MBA x 総合商社道場)にも書きましたが、買収プレミアムは30%が相場というだけで、この掛け算で買収価格が決まるわけではありません。つまり、事業計画をつくり、シナジーをそれに織り込み、DCFで算出した金額と株価の間で買収価格は決まるものであり、その価格が統計的に30%に落ち着いています。従って、80%のプレミアムを払ってもその分シナジーがあれば高値掴みでもなんでもなく(もちろん、このシナジーが絵にかいた餅でないことが前提)、一方、先日の大塚家具のように今の株価よりディスカウント(大塚家具 ヤマダ電機 株価分析 - MBA x 総合商社道場)になっているから安いというわけではありません。
(引用)
その理由を、買収プレミアムを例に取って説明しよう。「買収プレミアム」とは、企業買収(M&A)において、買収する側の企業(買収企業)が買収金を払う時に、買収される企業(被買収企業)の市場価値に上乗せする額の割合のことだ。 例えば、2014年にサントリーホールディングスが米アルコール業界大手のビームを、160億ドル(約1.7兆円)で買収した。ビームのその直前の企業価値総額は130億ドル前後だったので、サントリーはビームの株主に約25%のプレミアムを上乗せして、同社株を買い取ったことになる。ちなみに、米国の企業買収プレミアムの平均は30~40%程度なので、(他の事情は一定とすると)25%はそれほど高いわけではない。逆に、もしある企業が60%や80%の買収プレミアムを払っているなら、その企業は「高値づかみ」をしている可能性がある。
(引用終わり)