クロスボーダー取引で必須の NYU教授Damodaran の理論と使い方
前にも紹介したとおり、リスクプレミアムのデータベースとしてNYUの有名教授であるDamodaran教授のデータベースが使える。(データ更新は半期に1度)
http://pages.stern.nyu.edu/~adamodar/New_Home_Page/datafile/ctryprem.html
数字の見方を説明する。Damodaranは各国のリスクプレミアムの算出方法は以下の通り。
対象国のマーケットリスクプレミアム=aアメリカのリスクプレミアム(6.25%)+ b.対象国のdefault spread ×c調整(1.39)
a.Damodaranのデータは、アメリカのリスクプレミアムを基準に各国のdefault spreadを加算するもの。6.25%は 2016年2月11日時点のもので都度更新される。
b. 各国のリスクを反映する為に、default spreadを計算する。Default spreadは対象国のmoody’s 格付を使用するパターンとCredit default swap(CDS)を使用するパターン の2パターンある。
格付を使用する場合、格付毎の平均の数値を使うのに対して、CDSは各国のデータを 使用する為、国毎のリスクを反映できる。(但し、CDSはデータのavailabilityが国によってはpoorなので、格付の数値があるのではと私は推測している。
c. default spreadは債権のものなので、これを株式市場のプレミアムにするために調整する。株式の方が債権よりもリスクが高いので、2016年2月11日時点ではbのdefault spreadに全ての国に対して一律1.39を乗じる。これは、Damodaranによれば、「S&P Emerging Market Equity というIndexの標準偏差」を「Bank of America Merrill lynch(BAML) Emerging Public BondというIndexの標準偏差」で割った数字。
具体例(ブラジル)は以下の通り。
6.25%+ 2.44%(Baa3)×1.39=9.65%
6.25%+ 5.19%(CDS)×1.39=13.48%
差異は、ブラジルの政治の混乱があり一時的にCDSが上がっており、格付の平均と乖離が出ている。どっちを使うかは、ブラジルの本来の水準がどちらかと考えるか次第である。
上記の通り、数字に開きがありすぎというのもそうだし、株式市場と債権の調整が全世界同じ(1.39)でいいのか等の疑問もありますが、特にemarging marketのValuationではかなり一般的なpracticeなので、覚えましょう。