MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

お勧め書籍 戦略本

戦略についてのお勧め書籍はロバート・M・グラントの現代戦略分析。あと楠木建さんのストーリーとしての競争戦略もわかりやすいと思う。

 

ポイントは、戦略本は、考え方のベースとなる考え方を入れるのが大事なので、私はグラントの教科書で世の中に普及しているフレームワークを学ぶのがいいと思う。逆に、戦略本に書かれている最低限の知識(フレームワーク)は必要なるも、本をいくら読んでもいい戦略がつくれるわけじゃないので、戦略本は1冊しっかりよんで、何冊も読むものじゃないありません。Waste of timeなので。

ドンキTOB

 

ファミマが目指していたドンキのTOBが不成立になったとのこと。20%取得を目指したが、6600円の買い付け価格で売り手が少なく、わずか0.2%になったとのことです。

 

TOB発表前が5500円なので、20%のプレミアムを乗せた感じでしたが、TOB発表直後値段が跳ね上がり、TOB期間中は7000円付近にはりついたので、まぁ、売り手には魅力がなかったのでしょう。

 

このDealを少し掘り下げてみましょう。

 

まず、おさらいですが、Fair Market Value(FMV)=株価ではありません。マーケットは、感情で動きますし、当然マクロ経済の動向次第で上下します。従って、FMVはモデル回してDCFではじかなくてはなりません。

 

これにファミマがドンキに20%出資することによって生まれるシナジーがアップサイドとして加わります。これが買い価格のベースです。つまり、今回はこれが6600円だったのでしょう。

一方、売り手は今持っている価格の売り時を考えます。TOBは今回でいうと20%、つまり5人に1人が今売るのが最善と思ってもらわないいけません。 従って、これがTOBで経験則で言われる30%、40%ぐらいはらうと、TOBが成立するということです。 少しのプレミアムだと、「まだまだ上がる、今は売り時じゃない」と思われてしまうということです。

 

大事なのは株価×1.3がTOB価格なのではなく、DCF+シナジーTOB価格です。この価格が株価×1.3を結果的に上回るということ。

 

以上、総括すると、外からなんとなく推測するのは、ファミマがドンキに出資してもシナジーはそこまで多くなくて、たっぷりプレミアムを払えなかったということであり、一方、無理に価格を上げず、踏みとどまったというところは流石だなとも思ったりします。

 

 

 

「早稲田、TOEIC900点でも内定なし 高学歴就活難民のリアル」 という記事について

以下の記事を読みました。

 

https://blogos.com/article/345829/

一言でいえば、高学歴の学生は自分が特別だと勘違いして、大して準備もせず、就職が決まらないと。そして、結びは「高学歴難民にならないようにするには、早く「自分は人並み」と気づくことが大切なのかもしれません。」あります。

でもこの記事に出てくる学生は、志望動機もまとも言えず、エントリーシートのインプットのみでやった気になっていたとのこと。 しかし、それは準備不足も甚だしいでしょう。

そもそも就活で学歴は足切りであり、有名企業の内定数÷有名大学の学生数を計算すれば、高学歴というだけで内定がでないのは小学生の算数ができればわかるはず。

一方、ポジティブな言い方すると、就活する学生は全員人並み。だって、特別だったらサラリーマンにならないでしょ。ということで、自己PR、志望動機、業界研究をすれば誰でも内定がもらえます。

 

 

DCF 期間毎にWACCを変える

この前、セグメント別WACCを説明しましたが、期間毎にWACCを変えるというのもあります。たとえば、ベンチャーで立ち上がりの5年だけ高いWACCを使ったり、インフラ案件で建設期間だけ高いWACCを使い、安定期に入ったら引くWACCに切り替えるといった具合。 WACCは常に1本ではありません。

ライザップ 事業別WACC ファイナンス

事業部毎にWACCを変えるというのがあります。セグメント毎に類似会社を選びwaccを設定する、この前の続きでライザップでいえば、健康事業と再生事業でWACCを分ける。ライザップの投資は赤字会社を安くかい、黒字化して儲けるという超ハイリスクな事業をやっており、健康事業とは当然リスクが違うので、WACCを変えるというのは非常に合理的です。

この問題点は、理論上、健康事業と再生事業のWACCを加重平均するとライザップのWACCになるはずですが、ほとんどそうなりません。ということで、どこまでやってもいい加減というのは否めません。

 

ただし、DCFというのはどこまで言ってもいい加減なので、いろんな物差しをつかって、それを比べることでValueを求めるというものなので、こういうのがあるというのを知っておくのは有益と思います。

コングロマリットディスカウント 商社

総合商社は言わずもがなコングロマリットであり、MBAの教科書的にはコングロマリットディスカウント、つまり、分割してバラバラにして合計した方がEVが大きくなるというのが理論である。一般に、コングロマリットディスカウントは、一言でいえば、事業間で生み出すシナジー<管理コストの状態であり、実際総合商社で各事業間でシナジーがあるかというとあまりない。

一方で、資源だけ切り出したら、非常にハイリスクな事業になるので、総合であるメリットとして分散できるよねということも言えるが、これの反論は、投資家は自分で複数の事業に投資することで分散できるというもの。

こう考えると、コングロマリットなんてと言われそうだが、では、総合商社を分割して専門商社にしたら、今と同じ質の学生が採用できるのかなーんていうと、そうでもない気がする。理論的にはどこに配属されるかわからない総合商社より専門商社の方が分がある気もするが、実際はことなる。非合理的かもしれないが、実際そうだよね。。

 

なぜ経営者はM&Aが好きなのか? 失敗する理由

なぜ経営者はM&Aが好きなのか? 私の答えは3つ。

 

1.PLが増える

  今の会計ルール上、買収し20%以上の出資をすると被買収先のPLが連結決算上くっついてきます。従い、買えば買うだけ見た目上は増収増益になるので、成長を演出できます。(もちろん、買収資金見合いのDebt等が増え利払いも増えますが、通常買収先の取り込み利益の方が多いのでトータルは増)

なお、本質的には、被買収先のEVを増やさないと投資としてはもうけられません。

 

2.勝負事

  入札は勝負事なので、やはり負けたくないという心理が働きます。また、M&Aは新聞にもでるので、話題性や達成感は抜群。値段が高いので見送るのは理論的には正しくとも、これは数をこなして初めてできるようになる(と個人的に思っている)ので、大変難しい行為です。

 

3.結果がでるのに時間がかかる

  買収して減損になるのは、普通は5年ぐらいかかります。計画通りにいかなくとも、DCFはいじるところがたくさんあるので、のらりくらりしようと思えばできてしまうから。買収してすぐおとせというのも監査法人もいいにくいもの。従って、買収による称賛は自分、責任は他人(自分の後任)という図式ができあがります。もっとも、ウェスティングハウスぐらいひどい案件だと歴代経営者にさかのぼって犯人捜しは行われることがありますが。

 

ということで、一般にM&Aというのは成功確度が著しく低いにもかかわらず、みんなやりたがるのはこういう図式かなと。。。