MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

借入水準を見る指標 その2(総借入対月商比)

まず、総借入対月商比は、短期借入の水準を見るものだと、個人的には考えている。

以前解説した通り、短期借入は運転資金「売掛債権+在庫ー買掛債務」イコールなるはず。従い、単純にこの2つを比べて、短期借り入れがもし多いのであれば、過去の損や固定資産の短期借り入れで購入しているということになる。

総借入対月商比も同じで、結局運転資金が売り上げの何か月分かを掴んだうえで、それと比べるということ。財務分析の教科書には3か月が目安と書いているが、それは運転資金は特に卸売業の場合大体月商の3か月ぐらいが多いのでそう書いているだけ(もしくは経験則)であり、じゃー、6か月ならだめかと言うと、長いことは長いと思うが、ビジネスのネイチャーから運転資金が6か月なら問題ないといえるし、逆に運転資金がない(=買掛金が多い)はずなのに、短期借り入れが必要以上に多ければ、問題があるといえる。

借入水準を見る指標 その1

財務分析をする際、借入を何の指標で評価するか、ぴったりとした指標がなく、若いころはいつも頭をひねっていた。財務分析の本を読むと大体以下が載っているが、②固定長期適合比率は分かりやすいもの、①総借入対月商比、③インタレストカバレッジレシオは数値を算出するだけでなく、その意味するところを考えないといけないので、次回以降解説したい。

 

①総借入対月商比(総借入が月商の何か月分かを見るもの)

②固定長期適合比率(固定資産÷(自己資本+長期借入)、固定資産の資金調達を

 長期性の資金で賄っているか。

インタレストカバレッジレシオ(営業利益÷金利、営業利益ー金利=税前利益、

 つまり、支払金利に対して、どれぐらい稼ぐ力があるかを見るもの。1倍なら、

 利益はない。

 

トランプ

驚きのトランプ大統領誕生ですね。デーブスペクターがテレビでアメリカ国民は無知、無学と言っていたのが印象的でした。

さて、今後ですが、TPPが不承認となる等、アメリカが保護主義になり貿易が減ることで世界経済が減速すると言われています。円高になり、輸出企業の業績不振による株安が予想されます。中間期で好調だった総合商社も、海外利益が大半なので、円高により、決算(円建て)は中間期の見通しよりは、減益になるでしょう。

因みに、日本からアメリカ軍引き揚げをトランプ大統領が主張していることもあり、日本の防衛関連の商品を扱う企業の株が上がっていたのが個人的にはツボでした。

 

新興国のリスクフリーレート

新興国のValuationをするとき、まず問題になるのが、どこのリスクフリーレート、つまりどの国債の数値を使うか。

結論としては、ドル国債を使い、WACCを算出した上で、インフレ調整(+カントリーリスクプレミアム)したうえで、現地j通貨建てのWACCを算出する。

理由としては、新興国国債は、CAPM理論は、リスクフリーではないから。例えば、ブラジル国債は2016年11月現在15%ぐらい。一方、アメリカ国債(長期)は2%、両国のインフレ差は2.5%(ブラジル4.5%-アメリカ2%)とすると、ブラジル国債は4.5%が理論値のはず。従い、10%ぐらいリスクプレミアムがのっていることが分かる。従い、ブラジル国債はリスクフリーの資産ではないと言える。

更にいうと、新興国は市場が未成熟なので、データのAvailabilityに問題がある。子の観点からも、アメリカのデータを使うべきと言える。

 

 

 

 

 

なぜ卸売業の自己資本比率は低いか? を図にしました

製造業

       
債権 100 債務 50  
在庫 50 短期借入 100 =運転資金
固定資産 400 長期借入 200  
    自己資本 200 36%
総資産 550 総資産 550  
         
卸売業        
債権 250 債務 150  
在庫 190 短期借入 290 運転資金
固定資産 50 長期借入 0  
    自己資本 50 10%
総資産 490 総資産 490  

なぜ卸売業の自己資本比率は低いか?

財務分析の教科書に、卸売業の自己資本比率は20%、製造業は30%程度は必要と書いてあるが、なぜ商社は製造業に比べて自己資本比率が低いか。

答えは、運転資金。運転資金とは「売掛債権+在庫ー買掛債務」から計算されるが、商社の場合は在庫や金融機能のため、運転資金が大きくなる。この運転資金は通常短期の借入金で賄われる。この借り入れは、借入であるが、売掛債権と在庫が不良化しない限りは、商売をやめると返済が可能となる。(例:在庫を1億円持ち、借入が1億円あったが、在庫を全て簿価以上で販売すると、借入はゼロになる) よって、金融機関も商社の販売先等が優良であれば金も貸しやすい。

更にTrade主体の伝統的な商社は固定資産を持たない。固定資産を持つと、基本的には基本的には長期で回収する資産なので、銀行から借入100%賄うことは珍しく、一定割合で自己資金が入る。よって、製造業の自己資本は厚くなる。

このように、財務分析は機械的に比率を覚えるのではなく、なぜそうなるのかを考えるのが大事。

 

 

 

 

 

 

 

なぜ債務超過=倒産ではないか?・

うちの新人に「この会社債務超過なのに、なぜ倒産しないのですか?」と聞かれたので、その答え。 

まず債務超過とは会計上のBSで、株主が払い込んだ資本金等よりも、過去の累積損失が大きくなっている状態。つまり、過去、株主から預かった金を全てすってしまっている状態。(例:資本金1億円と借入50百万円で事業を始めたが、全額すってしまった。この場合債務超過額は50百万円)

ではなぜつぶれないかというと、誰か(基本は株主か銀行)が継続して資金を出してくれるから。なぜ儲かっていない会社に資金を出してくれるかというと、理由はさまざまで、以下の通り。

・大企業にとって戦略子会社で、まだまだ金をつっこんで成長させたい。

・銀行が金を貸し付け過ぎて、損失計上を先送りしたい。(too big to fail)

・過去は儲かってなかったが、しっかりとした将来もうかる計画があり、それが銀行にも認められている。

・BS上の資産に含み益があり、実質は債務超過ではなく、それを担保に金を貸せる等

いずれにせよ、最初にいったように、債務超過とは過去儲かっていなかった結果を示すものであって、資金繰りとは異なる概念ということを理解しなければならない。