MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

入札案件の流れ その2

今回は、NDA、ティザーの入手、1次BIDまでを簡単に説明します。

通常、入札案件では、FAや売り手から複数のBuyer候補に声をかけます。

PEが株主の場合なんかは、50社ぐらいティザーをばら撒くときもあれば、

10社ぐらいにしかまかないときもあります。(情報管理をしない場合は

そもそも相対で入札にはしません)

 

ティザーには、会社概要、経営陣、事業内容、財務諸表等についての

簡単な記載があり、通常30-100ページでパワーポイントが多いです。

基本はヒアリングはしないベースで、この資料+ネット他で入手した

情報をベースにValuationを行います。苦労する点としては、事業計画

とCFの記載があればいいのですが、過去実績しかない場合もよくあり、

その場合、償却とか売上の成長とか、CAPEXとか勝手に前提おいて

計算するしかありません。

1次BIDは、価格と買収スキームと買い手の概要をかいたレターを出します。

価格はレンジで出しますが、あまり広い買い手も評価が難しくなるので、

±10%ぐらいがいいように個人的には思います。入札では価格だけでなく、

金があるのか、売り出された株を丸々取ってくれるのか等も見られます。

共同出資やプロファイでDebtをこれから見つけますといった人は実現度が

高くないとみなされ、価格は一番でも落とされる可能性があります。

因みに、1次BID自体は当然non bindingです。しかしながら、DDで価格を下げる

理由がでてくれば当然値引きは当たり前ですが、そうでなければ紳士協定として

基本この価格が維持されるというのが常識になります。もちろん、1次BIDは100億円、

2次BIDで30億円みたいな品の悪い会社もあるのは事実ですが、総合商社はある程度

評判を気にするのでそこまで下品なことはしません。よって、Non bindingとはいえ、

きちんとした数字を出すべきと個人的には思います。

 

 1次BIDを通ると(通常3-5社のみ)、DDに入れます。続きは次回。

三井物産の社内企業制度について

三井物産が社内企業制度を導入するという記事が1年前ぐらいにあった。

でも昔の商社みたいに、1億円ぐらいの利益規模じゃ今の商社は満足しないので、この人口減の国で、事業計画で100億円とは言わないまでも10億円単位の利益を見込めるベンチャーって実際は難しいよなという気がします。

ということで、実際の狙いは、新卒採用の宣伝だったり、この制度を通じて社内に新たな風を吹き込みたいという間接的なものなんでしょう。

初心者向けのValuation

初心者向けのValuationのお勧め方法を書きます。初心者といいますが、私も実際の仕事のときに価格の感覚をつかみたいときに使っているやり方です。

使うフォーミュラーは、 EBITDA ×倍率=EVとEV-Net Debt= MV と だけです。

一番頭を使うのは、EBITDAで、その会社のベースとなる収益性、長期の均衡水準を見極めるのが全てです。この会社は2017年3月に100億円利益をだしたが、実力は80だとか、逆に120だとか。知らない会社はまだしも、自分がいる業界なら、大体分かるんじゃないかなと思います。

 

次に倍率ですが、これは経験則で5-10倍です。高成長が期待できる会社で10倍。逆に古く成長が期待できない業界なら5倍です。10倍を超えると買ってはだめまではいいませんが、高いことを認識しましょう。

これでEVがでますので、後はBSから借入れを引けば時価総額が出る仕組みです。

ちょうざっくりですが、DCFよりよほど正確です。

 

 

 

 

 

社内資本金制度

私の大好きな管理会計の分野に社内資本金制度がある。アメーバ経営の流行で、セグメント毎に本社が資本金を割り当て、BS・PL・CFを作らせ、あたかもひとつの独立した会社のように経営に当たる。

 

簡単な仕組みは以下の通り。

 

1.仕組み

まず、資産(売掛債権や設備)、つまりBSの左側に対して、負債・資本、BSの右側で資金調達を行う。資本と負債を分ける等いろいろなやり方もあるが、ここではMixしてWACC(加重平均資本コスト)を使う。 事業部は稼いだ利益から資本コスト(資産の金額×WACC)を引いた金額で業績が評価される。

 

2.ポイント

社内資本金制度のポイントの1つめは、資産効率をセグメントが考えるようになる。これが社内金利だけでと利益のみで評価されるが、BSを作成することにより、資産効率も加味して、業績が評価されるので、セグメントは資金の使い方に知恵を使うようになる。場合によっては、剰余金を本社に返して、ROEを良くするというインセンティブが働いたりする。(本社はその金を他の事業部で使う)

次のポイントは、本社から各事業部に求める利益水準を明確にできる点。たとえば、商社の場合、資源投資と国内の小売事業では求める要求利回りが異なる。事業のリスクに応じてWACCを変えることで、資源はハイリスクだからこれだけ稼いでもらわなくてはならないという濃淡をつけることができる。

商社の将来性

商社の将来性があるかという問いに対して、答えはYESともNoともいえないが、少なくとも自分で決められるということは言うことができる。

なんだそんなことかと思うかも知れないが、これって実はすごいこと。商社は決まったビジネス領域はないので、やろうと思ったらなんだってできる。これが、金融だったりメーカーだったりすると業態の変化って簡単じゃない。もちろん、かつての富士フィルムみたいに業態を変えて生き残る好例もあったりするが、たとえば大量の人と支店を抱えた銀行の業態変換は簡単じゃないだろうし、日系メーカーが電気自動車で覇権を取るのも大変。その点、商社は将来性のないビジネスをクローズして、新たらしいビジネスに人と金をシフトすればいいだけで、実に簡単。今言われている、電気自動車、フィンテック、AI等々だって、それによって既存ビジネスはしんどくなるかもしれいないが、それと同等、それ以上に機会が広がっている。

従い、将来性は自分の目利きと腕次第という回答になる。