MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

M&Aの仕事を20年近くやってみて

商社に入り、M&Aの仕事を20年近くやってきた。国内、海外、買収、売却、TOB、インフラ系と様々なDealを手がけて来たが、その数30ぐらいになるだろうか。M&Aの仕事をしてみて思うところを少し書いてみようと思う。

 

まず、やってよかったと思うのは、外で売れる専門性の高い仕事であること、そして、M&AのDealはある意味プロジェクトなので、仕事の成果が見えやすいこと。これは実はとても大事で、Dealをうまく纏めれば、新聞で出るし、その年の査定でもアピールしやすい。また、M&Aは事業の重要なマイルストーンなので、うまくやれば、あの事業はXXさんがやった案件と歴史にもなる。

 

次にM&Aの専門性について掘り下げる。私はフェーズとしては、2つぐらいに分かれると思っている。最初のフェーズは、Dealを回せるようになること。

M&Aは総合格闘技といわれるよう、ナレッジの塊。M&Aはそもそも戦略のど真ん中なので、戦略・マーケ・オペレーションの知識は必要だし、一方、会計、法務の深い知識を求められる。本当に幅広い。これらの知識は商社に入り新人から毎日コツコツ2時間勉強して、早くて5年(もっとかな)はかかってしまう。これに経験が必要。勉強したナレッジを実際のDealに適用して、それを5〜10回ぐらいやると相当馴染んでくる。これがフェーズ1。

 

もちろん、M&Aはすごく高度な仕事だし、習熟にもDealをやればやるほどいいし、プロももちろん存在するが、私個人としては、Dealに慣れれれば慣れるほど、取引の実行自体は感覚的には作業になってくる。飛行機のパイロットと同じで、素人には絶対できないが、いったん操縦を覚えたらそんなにやることなさそう(すいません。想像で言ってます)なのと同じ。

 

なので、私がFAという仕事に惹かれないのもこれが理由になります。

 

フェーズ2は、それこそ儲かるDealをやることですね。これにはやっぱり、DDの質、Valuationと交渉、そしてPMIとPDCAサイクルの構築の3点が必要。

DDの質は、とにかく事業の本質を見極めるとともに、買収後の経営も視野に入れながらいかに質の高いDDをやるか。Valuationは、やっぱり安くないと儲からないので、いかに上手に買うか(もしくわ、ブレずにWalk Awayするか)。PMIは、買収後にいかにうまく経営するか。

この3点を磨き上げ、儲かるM&Aをやる。M&Aは少なく見積もっても半分は失敗するので、個人的には以上の3点にValueが埋もれており、私もまだまだ

発展途上だと思っています。

 

ちなみに、上記観点についてはFAは基本役に立たないし、コンサルも使いようによっては役に立つかもしれないが、基本は事業会社側で相当手綱を引いてうまくやらないとダメでしょう。

 

上記3つの腕を磨くこと、それを形式知にすることが、ある意味、私にとってのライフワークになってます。