Showroomの記事について
https://president.jp/articles/-/29600
Showroomについての記事がありました。官報等から丁寧に数字を拾ってすごいですね。
“価値が1/10に”とありますが、わずか12百万円のために、Down roundするかなという疑問がわきますが。
この記事では、DCFによる評価と書いてますが、通常ベンチャー投資の場合、DCFはあまり使いません。
ベンチャーの場合、売り上げ増をどう見込むか等事業計画があてにならないこと、また割引率の設定が難しいこと(上場株からとったベータでは適切なリスクを反映できない。たとえば、30%とかで割り引くこともできるが、30%である根拠がない)が理由です。
従って、マルチプルが主流です。一方で、赤字であることもままあるので、PERやEBITDAが使えないこともままあります。その場合は、PSR( price sales ratio)が使われます。つまり、時価総額を売り上げで割って、そのマルチプルで価値評価をする。
PERやEBITDAは基本はCash flowに近い指標になり、事業から生み出されるCashに価値をつけるというファイナンスの理論に合致するものですが、売上は粗利益率や販管費比率は会社、ビジネスによって当然違うわけで、同じ売上高でもEBITDAは大きく違うことは当然あります。ということで、PSRは非常にざっくりしたValuationになります。
もっとも、ベンチャー投資はポテンシャルにBetするものなので、ビジネスモデルをきちんと評価し、可能性を感じるなら、評価自体はそこまで重要にはならないのかもしれません。
M&A取引におけるお行儀、評判
M&Aでは、LOI(意向表明書)で取引の大枠を握りDue Deligence(DD)に入り、株式譲渡契約(SPA)、そしてクロージングになるわけですが、通常、法的拘束力が生じるのはSPA締結であり、それまでは基本、Non-binding baseになります。
もちろん、買い手からすればDD前のLOIでBindingにできるわけもなくそれはそれで仕方ない
にしても、取締役会で否決されてしまえば当然Dealは買いませんし、DDの途中に気が変わったというのも十分ありえます。これが嫌な売り手は、Breakup feeを要求しwalk awayを抑止したり、実行性はともかく、good faith条項を入れて、信義則を問うということでそれのprotectionをします。
以前にも述べましたが、ただやめればいいだけの買い手と異なり、売り手はDDまで入ってしまうとやめれないとまではいいませんが、実務的に難しい局面も十分想定されます。たとえば、DDを売り手だけでやるのは無理なので対象会社の社員を通常巻き込みますが、一度、売ると決めた以上、やっぱやめたとなった後、対象会社の社員の心は株主からは離れてしまいます。
損害賠償できたとしても、こういうのはカバーできないですしね。
こう考えると、特に相対の場合、買い手のポジションが強くなります。従い、LOIでは甘い言葉でささやきとりあえずDDにはいり、DDで重箱の隅をつつきまくり、値段をたたきまくるということも可能になります。もちろん、LOI時にはわかってなかったこと、DDで新たな事実が分かった場合は遠慮くなく値下げすればいいと思いますが、そうでない場合は、LOIでのコミットを守る、お行儀の良さが求められるように思います。長期で見れば、それが業界での評判にもなるんでしょうし。
M&Aの心構え 良い案件
良い投資案件をやる、これが我々の究極の目的にはなるものの、実際には難しいです。
前から言う通り、ほとんど買値で勝負は決まる一方、高い値段を出さないと競合に勝てないのも事実。
従って、マインドセットしては、「良い案件をやる」のではなく、「良い案件にする」というのが大事な気がします。
孫さんSVFの2号ファンド
孫さんのSVFの2号ファンドの記事がでてました。ファンドサイズは12兆円と前回の倍。流石に、UBER、Wework等大型の案件がそこまでもうないのではと思うものの、1号ファンドの6兆円を2年で使い切った、つまり1年で3兆円投資したというので、そのスピード感と規模は流石ですね。
商社の年間の投資額は各社0.5-1兆円程度なので、国内では”巨大”でも総合商社は規模は世界レベルでは、全然top tierではないですね。
商社の場合1000億円規模の投資だと、出せなくはないですが、乾坤一擲の意味がどうしてもでてきますが、毎年数兆出せるSVFや時価総額は50兆円とかあるGAFAはポンポンだせてしまいますね。
まぁ、ニッチプレーヤーで生きていくしかないですね。
海外子会社によるM&Aを本社はどういうスタンスでやるべきか
海外子会社によるM&Aについて、記事があったのでシェアします。この記事によると、海外子会社でM&Aをやる際、本社主導でやるパターンと現地に裁量を与えやらせるパターンと2つあるそうです。この記事では、日本企業は現地に裁量を与えるパターンが多いとのことです。
私の意見では、当然、本社でグリップを利かせてやるしかないというのが結論。理由は、記事にもあるとおり、失敗したときに、本社の取締役の善管注意義務違反が問われるから。
もう一つは、記事ではアメとムチでガバナンスを利かせるのが大事とありますが、私はこれはワークしないと思います。なぜなら、M&Aは結果が分かるまでにそれなりに時間がかかるものであり(通常、1-2年で減損までいかない)、一方、子会社の経営陣は、M&Aにより業務範囲が広がった、Payを上げろとなります。従って、たとえば、1-5年は給料アップ、減損が出るころには辞めているということもありうるわけです。
結論としては、しっかり本社でやりたい、やれる案件かを見極めないといけません。