MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

社内資本金制度

私の大好きな管理会計の分野に社内資本金制度がある。アメーバ経営の流行で、セグメント毎に本社が資本金を割り当て、BS・PL・CFを作らせ、あたかもひとつの独立した会社のように経営に当たる。

 

簡単な仕組みは以下の通り。

 

1.仕組み

まず、資産(売掛債権や設備)、つまりBSの左側に対して、負債・資本、BSの右側で資金調達を行う。資本と負債を分ける等いろいろなやり方もあるが、ここではMixしてWACC(加重平均資本コスト)を使う。 事業部は稼いだ利益から資本コスト(資産の金額×WACC)を引いた金額で業績が評価される。

 

2.ポイント

社内資本金制度のポイントの1つめは、資産効率をセグメントが考えるようになる。これが社内金利だけでと利益のみで評価されるが、BSを作成することにより、資産効率も加味して、業績が評価されるので、セグメントは資金の使い方に知恵を使うようになる。場合によっては、剰余金を本社に返して、ROEを良くするというインセンティブが働いたりする。(本社はその金を他の事業部で使う)

次のポイントは、本社から各事業部に求める利益水準を明確にできる点。たとえば、商社の場合、資源投資と国内の小売事業では求める要求利回りが異なる。事業のリスクに応じてWACCを変えることで、資源はハイリスクだからこれだけ稼いでもらわなくてはならないという濃淡をつけることができる。

商社の将来性

商社の将来性があるかという問いに対して、答えはYESともNoともいえないが、少なくとも自分で決められるということは言うことができる。

なんだそんなことかと思うかも知れないが、これって実はすごいこと。商社は決まったビジネス領域はないので、やろうと思ったらなんだってできる。これが、金融だったりメーカーだったりすると業態の変化って簡単じゃない。もちろん、かつての富士フィルムみたいに業態を変えて生き残る好例もあったりするが、たとえば大量の人と支店を抱えた銀行の業態変換は簡単じゃないだろうし、日系メーカーが電気自動車で覇権を取るのも大変。その点、商社は将来性のないビジネスをクローズして、新たらしいビジネスに人と金をシフトすればいいだけで、実に簡単。今言われている、電気自動車、フィンテック、AI等々だって、それによって既存ビジネスはしんどくなるかもしれいないが、それと同等、それ以上に機会が広がっている。

従い、将来性は自分の目利きと腕次第という回答になる。

 

Gun Jumping

米国では、シェアが低い同士の合併であっても、クロージングの前から単一の企業体のように行動し、競争を阻害する行為を行った場合を禁止される。これをガンジャンピングという。日本語でいうフライング。

大きいDealならともかく、世の中の競争に影響がないものを適用されるので、大変面倒くだい。ガンジャンピングにならないために、営業情報(価格や顧客等)は、区分けして、アクセスできる人間を限定する必要がでてきたりします。この営業情報にアクセスできる人をクリーンチームといったりします。

起業するために商社に入社するという考えについて

よく学生が起業するために商社に入社するという考えについて、私の考えを述べたい。結論としては、この考えが正しいかどうかは50 vs 50。

というのは、確かに商社の仕事はまさに経営そのもので、高い視座で物事を見て、また同時にあらゆるオペレーション(営業、経理、物流等々)に精通することが求められる。従い、勉強する素材はごろごろしており、手を伸ばさなくても簡単にアクセスできる環境。

一方、人・物・金、そして看板というリソースをジャブジャブ投入してmake moneyするのが商社であり、small sizeの会社と根本的に違う。商売という観点ではin general同じであるが、細かい実務を考えたときということで商社で学んだこと=起業スキルではないような気がする。(あと、居心地が良すぎて、そのまま辞めずに居続けるリスクもあります)

もっとも、私は商社に入る人間は、起業とかじゃなくて、国家レベルの仕事ができる醍醐味に魅力を感じて入社して欲しいと思っているが。

 

 

Hurdle rate

Hurdle rate、つまり投資をする際に最低限クリアーしなくてはならない水準、は投資をやる会社ならどこでも持っているはずだが、その水準はいかに決めればいいか。

基本的には、上場会社であれば、その会社の株価から投資家の要求利回りを計算するのが基本になる。一方、総合商社みたいに多種多様なビジネスをやると、インフラ投資みたいに非常に硬いものから、VCみたいない事業もあり、一律のものさしでは図れないという問題がある。従い、出資先の類似会社から期待利回りを出して、それをもってHurdle rateにするといやり方を取ったりする。

一律にすると、リスクが低い事業も高い割引率で評価しなくてはならず結果的に競争力がなくなるという問題があり(逆もしかり)、一方、出資先の業種によりHurdle rateを変えると、すべて合計したものが、その会社に対する要求利回りと乖離してしまうかもしれないという問題があり。そもそもシンプルでない。どちらも一長一短で決めの問題ですね。

 

 

peと商社の違い 最終回

第17回は出資比率。

PE:100%
商社:20-100%

PEは基本事業ノウハウを持たず、ガバナンスを利かせて(簡単に言うと、Performしないとクビにする)プロ経営者を働かせるモデルであり、従い、出資比率は基本100%にする必要がある。

 

一方、商社の場合は、フレキシブルであり、20%出資で最低限のアイテムについてVeto rightを持ち、あとは出向者を出して現場のオペレーションを押さえることで、グリップを利かせるという変化球も可能。たとえば、メーカーと8:2で合弁をつくり、正直工場はメーカー任せ、商社としてはセールマネージャーのポジションを押さえ、販売をコントロールできればいいというような割り切りも可能。


加えて、連結BSを小さくしたいというニーズもあり、それを狙って、持分法にわざとすることもある。

peと商社の違い 第16回

第16回は、従業員数。

PE:数十人
商社:数千人

PEはあくまで投資家のプロであり、立ち上げの期間を除いては、出資先に出向することもないので、1案件の担当は通常2,3名でそこまで人手がいるビジネスではない。経理や法務等のアドミは基本アウトソース。従って、PEの従業員数は、通常十数人であり、
多くても30人ぐらいしかいない。

 

一方、商社の場合は、いまだにトレードもやっているし、投資についても多くの出向者をだし、現場でオペレーションもやるので、マンパワーがいる。国内の大きめの投資先では出向者が数十人っていうケースもある。これに加え、経理、法務、IR、IT等の
コーポレートスタッフも加わり、結果数千人の従業員となる。

 

但し、最近の商社はPE型投資も増えており、今後も毎年100人以上新卒を採用し、今の従業員規模を保つのか、或いはPEのように少数精鋭型に移行するのか。個人的にはある程度従業員は減っていくと思っている。