MBA x 総合商社道場

MBAと総合商社の事業投資をメインの話題にしたブログです。

Hurdle rate

Hurdle rate、つまり投資をする際に最低限クリアーしなくてはならない水準、は投資をやる会社ならどこでも持っているはずだが、その水準はいかに決めればいいか。

基本的には、上場会社であれば、その会社の株価から投資家の要求利回りを計算するのが基本になる。一方、総合商社みたいに多種多様なビジネスをやると、インフラ投資みたいに非常に硬いものから、VCみたいない事業もあり、一律のものさしでは図れないという問題がある。従い、出資先の類似会社から期待利回りを出して、それをもってHurdle rateにするといやり方を取ったりする。

一律にすると、リスクが低い事業も高い割引率で評価しなくてはならず結果的に競争力がなくなるという問題があり(逆もしかり)、一方、出資先の業種によりHurdle rateを変えると、すべて合計したものが、その会社に対する要求利回りと乖離してしまうかもしれないという問題があり。そもそもシンプルでない。どちらも一長一短で決めの問題ですね。

 

 

peと商社の違い 最終回

第17回は出資比率。

PE:100%
商社:20-100%

PEは基本事業ノウハウを持たず、ガバナンスを利かせて(簡単に言うと、Performしないとクビにする)プロ経営者を働かせるモデルであり、従い、出資比率は基本100%にする必要がある。

 

一方、商社の場合は、フレキシブルであり、20%出資で最低限のアイテムについてVeto rightを持ち、あとは出向者を出して現場のオペレーションを押さえることで、グリップを利かせるという変化球も可能。たとえば、メーカーと8:2で合弁をつくり、正直工場はメーカー任せ、商社としてはセールマネージャーのポジションを押さえ、販売をコントロールできればいいというような割り切りも可能。


加えて、連結BSを小さくしたいというニーズもあり、それを狙って、持分法にわざとすることもある。

peと商社の違い 第16回

第16回は、従業員数。

PE:数十人
商社:数千人

PEはあくまで投資家のプロであり、立ち上げの期間を除いては、出資先に出向することもないので、1案件の担当は通常2,3名でそこまで人手がいるビジネスではない。経理や法務等のアドミは基本アウトソース。従って、PEの従業員数は、通常十数人であり、
多くても30人ぐらいしかいない。

 

一方、商社の場合は、いまだにトレードもやっているし、投資についても多くの出向者をだし、現場でオペレーションもやるので、マンパワーがいる。国内の大きめの投資先では出向者が数十人っていうケースもある。これに加え、経理、法務、IR、IT等の
コーポレートスタッフも加わり、結果数千人の従業員となる。

 

但し、最近の商社はPE型投資も増えており、今後も毎年100人以上新卒を採用し、今の従業員規模を保つのか、或いはPEのように少数精鋭型に移行するのか。個人的にはある程度従業員は減っていくと思っている。

peと商社の違い その15 担当

第15回は、担当者の案件の関わり方

 

PE:原則投資期間中の担当変更なし
商社:原則投資期間中の担当変更あり

 

これもケースバイケースだが、PEは案件と担当がひも付きで、出資からEXITまで一貫して担当することが多い。

 

一方、商社は基本EXITを想定してないこともあり、また基本は人事もローテーションを行うことから、担当が3-5年で変わる。

 

一言いえば、雇用形態の違い(終身雇用かどうか)からこの差は生まれるのだが、個人的にはPEの方が案件のValueを上げる意味では、優れていると思う。

 

なぜなら、担当が変わるたびに人的コネや知識を再構築しないといけない。特に出資時のメンバーがいなくなると、案件の戦略や構想が忘れられる傾向あり。結果、案件がガタガタしてしまう。

 

また、PEの場合は、やった案件が個人のTrack recordになり、その後の個人の評判や転職に大きく影響する一方、商社の場合は、そこまで案件と個人のひも付きがない。(成功案件は”俺がやった”という人多数、失敗案件は”あれはあの人がやってね”といつのまにかフェードアウトといったサラリーマンによくある風景が起きたりします)責任があいまいな印象。

 

特に商社の業績評価はPLなので、出資した直後は持分利益をも増え、担当したメンバーは出世し、数年たって減損するころにはそのメンバーは既に異動するなんてことも当然起きる。

 

 

じゃー、商社もPEみたいに担当をかえなければいいじゃないかと言うと、基本EXITをしないビジネスモデルなので、20年、30年保有し続けるなんてこともあるし、海外投資がメインの中、じゃー君、アフリカにEXITするまで駐在ねなんて言われても困るわけで、仕方ない面も当然あります。

peと商社の違い その14 報酬体系

第14回は報酬体系の違いについて述べる。

PE:基本給+インセンティブ
商社:基本給+ボーナス

PEはファーム自体が投資家との契約で、予め定めた
リターンを超えるリターンが上がると、Carried interestと呼ばれるボーナスが支払われ、これが従業員にも支払われる。


パートナークラスになれば、案件成功の際には億単位のボーナスが支払る。ファームによるが、パートナーだけで山分けというケースもあり、ヒラの社員には支払われない、支払われても小額という場合が
多いような気がする。パートナーになりたい、でも上が全然辞めない、というのがPEで働く中堅・若手の不満ではないだろうか。(勝手な想像ですが)

 

一方、商社は、会社業績+個人業績でボーナスが支払われるが、中には会社に数百億の利益をもたらすDealをしても、ボーナスへの反映には限界があり、例えば30代社員でホームランを打っても、同期とのボーナスの違いは全然大きくない。
結局、30年、40年勤める中でどれだけ出世するかが報酬の違いを生む。

peと商社の違い その13 雇用形態

第13回は、従業員の雇用形態の違いについて述べる。

PE:プロフェッショナル/終身雇用でない
商社:サラリーマン/終身雇用

PEは、コンサル等と同じくプロフェッショナルファーム。従い、基本は厳しい世界で、当然解雇等もあり得る。但し、1案件に3-5年かかること、また、投資家も基本は各人のトラックレコードを信頼し投資していることもあり人がめまぐるしく入れ替わるのは好ましくなく、コンサルとか投資銀行よりも勤続年数は長いように思う。

 

一方、商社は伝統的な日本企業でサラリーマンであり、50代でも同期入社の100人のうちまだ80人は残っているみないな驚異的な勤続年数を誇っており、過去苦しいときに早期退職の募集みたいな
ことは行われてことはあったが、解雇等はない。

peと商社の違い その12 要求リターン

第12回は要求リターン。違いは以下の通り。

PE:IRR25%
商社:WACC5-10%程度

 

通常PEのIRRは20-30%を求められる。IRR20%といえば、保有期間5年なら、ROIで2.5倍、つまり100億円で買った会社を250億円でうらないといけない。相当重いノルマと言えます。


従って、ファンドはIRRを高める為に、Value up したら早々に売却します。上記の通り、保有期間を短くする必要があるため、PEは会社の成長を待つという悠長なことはせず、また、回収に時間がかかる新規投資等のFresh Moneyを入れるようなことをしません。

 

逆に商社は投資家からの要求利回りが低いので、長期でじっくり事業を育てることができます。たとえば、成長ステージの会社に立ち上げ5年ぐらいはCAPEXを打ち続け、その後10年、20年で回収していくといった長期スパンのビジネスも可能。

日本の調達コストが安いのが大きいが、商社のリターン目線はPEとは大分違うことは覚えておいた方がいい。